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「工務店のための契約実務」|トラブルを防ぐ3つのチェックポイント

2025.04.30
  • トラブル防止

 注文住宅やリフォームの工事では、「契約書」がすべての基本になります。ところが、現場の忙しさや慣習により、工務店が契約書の作成を軽視した結果、法律違反に問われたり、後々の代金未払い・追加工事トラブル・契約不適合責任(以前の瑕疵責任問題に代わる責任です)など深刻な事態に発展することも少なくありません。契約トラブルは、工事の品質や顧客満足度だけでなく、工務店の信用や経営基盤にも大きな影響を及ぼします。この記事では、工務店が契約書でよくある失敗3つを取り上げ、それぞれの回避法の実務ポイントを解説します。

【失敗①】契約書を取り交わさず、口約束で工事を開始する

 リフォーム工事を頼まれたとき、手軽に請負ったことで、契約書を取り交わさなかったり、設計図書や仕様書が不十分な場合もあります。契約書が作られなくとも、請負契約は口約束でも成立します。しかし、口約束は建設業法違反になるばかりか、そもそも契約内容の根拠があいまいとなり、「言った・言わない」の水掛け論に発展しかねません。また、設計図書や仕様書が添付されていないと、何が完成した姿かが分からず、請負代金の未払といったトラブルに繋がるきっかけとなります。

【チェックポイント】

 これを回避するためには、どのような工事であっても、契約書を取り交わすことが重要となります。また、その工事内容の設計図や仕様書、工程表等は、その契約書の一部になりますので、「添付書類も契約書の一部」と書いた上で、契約書に添付することが大事になります。

【失敗②】未収リスクやサービス工事が発生~工期・支払・追加工事ルールの重要性~

 工事を始めるとき、「工期」や「支払条件」、「追加工事」の取り決めが曖昧なまま勧めてしまうことがあります。しかし、これは後々、大きなトラブルを引き起こす原因になることがあります。例えば、工期や支払時期がはっきりしていないと、資金繰りが悪化するほか、工期遅延の責任問題が発生したりします。また、追加工事や仕様変更を口頭や「サービス対応」で済ませてしまうと、代金の未収リスクや責任範囲の拡大につながりかねません。

【チェックポイント】

 これらを防ぐためには、工期については「○月○日から○月○日まで」と明確に記載し、支払条件も「着手金・中間金・残金」など具体的に取り決めるべきです。追加・変更工事についても、必ず書面で合意し、必要に応じて追加契約書や変更確認書を取り交わしましょう。たとえ無償サービスの場合でも、その旨を文書に残すことが重要です。小さな手間が、大きなリスク回避につながります。

【失敗③】保証期間があいまい

 請負契約で意外と見落としがちなのが、保証期間の取り決めです。補修対象や対応期間を契約書にしっかり明記していないと、いつまでも「補修してほしい」と求められるリスクが生じます。例えば、引渡しから3年後に「クロスがめくれた。瑕疵だから無償で直して」と言われ、結局追加費用なしで再工事せざるを得なくなった…というケースも珍しくありません。

【チェックポイント】

 こうしたトラブルを防ぐためには、民法や住宅品質確保促進法(品確法)に基づき、契約不適合責任(民法が改正され、瑕疵担保責任は契約不適合責任に改正されました。)や保証期間を契約書に明記することが大事になります。その際、建物の躯体部分とその他の部分、機器設備、室内の仕上げ・装飾・家具など、部位によって期間を変えることも有用です。また、合わせて、「経年劣化や施主側の使用による損傷は補償対象外」といった限定条項も盛り込んでおきましょう。

最初の契約できちんと線引きをしておけば、無用な負担やトラブルを防げます。小さな手間で、大きな安心を手に入れましょう!

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